プロの技見たり!

今所属するオーケストラでシベリウス交響曲第2番を練習している。で、私はトランペットの一番を担当するのであるが技術的に難しくて困っているところが一カ所ある。本当のことを言うと吹けないところが20カ所ぐらいあるのであるが、その中でもここは本当に難しい。
3楽章の練習番号F、スケルツォの緩徐部を抜けて再び早いスケルツォに戻る部分。木管とホルンが幸せ感たっぷりの4分の12小節のメロディーを歌い上げてその余韻も消え残るところにトランペットとトロンボーンがタカタカタタカタタカタンと一気に3楽章のテーマを叩き込むのである。ほんの一瞬、時間にしてせいぜい一秒の出来事なのであるがこれが重要なのである。一瞬なのでぼーっとしていると聞き逃しちゃうかもしれないが、金管奏者なら間違いなく聞き耳を立てているはずである。もしかしたらホールの残響の影響とか運悪くくしゃみをしちゃった隣のおっさんのせいとかで聞き耳を立てている金管奏者にも聞き取れないかもしれない。でもとにかく吹いている側としては、ここがちゃんと吹けないと沽券にかかわるのである。
ここでこのフレーズがどれだけ難しいか体験してみましょう。まずはタンギングメトロノームを152ぐらいに合わせましょう。1拍目は16分音符でタカタカ、2拍目と3拍目は3連符でタタカ、タタカ、最後に4拍目の頭でタンです。はい難しいですね。さらに右手の指を連動させましょう。音階でいうとシシシシ、シラ#シ、ド#シラ#、シです。シは中指の2番バルブを押してください。ラのシャープは人差し指の1番バルブで、ドのシャープは1番バルブと2番バルブを同時に押します。はい、それじゃメトロノームにやってみましょう。できた人いますか。
やってみると判ると思いますが右手と舌の連動が結構難しいんですよ。ちょっとでも指が遅れるとプスとかいってラッパは鳴ってくれません。私の場合、不器用なんで中指が1、2回余計にピコピコすることがよくあります。
タイミングよくN響アワーでシベ2の放映があったので録画しながら見ました。ちょうどこの場面でトランペットの関山さんの手元がアップになったんですけど、なんだか中指がピコピコって動いただけ。あの難しいバルブアクションはいったいどこに行ったんだ!なんで中指ピコピコだけであのフレーズができるんだ!あのトランペットは何管だ!って感じで超スロー再生で何回も見ましたよ。で、判りました。人差し指と薬指の1番バルブと3番バルブをおさえっぱなしにして、2番バルブをピコピコすれば良いのね。シは1番と3番を押さえれば良くて、ラのシャープとドのシャープは1番2番3番を全部押さえても出せるのね。なるほど、これで中指ピコピコでできるんだ。さすが関山さん賢い。おせーてくれてありがとう。
それからここを吹く前に2番スライドをちょっとのばしておくと音程もばっちりなのね。すばらしい。どなたかは存じませんがカメラマンと編集の方ありがとう。こんなところまでばっちり放送してくれてありがとう。これで3楽章は乗り切れそうです。(ほんまかいな)